夢を見た。

夢を見た。
起きたときに
「いい夢だったのに」
と言った夢だった。

 

 

起きる直前には
東北を走る列車の中で、「美しい黒猫とデートをするんだ」という友人と話をしていた。
私は、
「さっき電話をくれたよね。ごめんね、あなたの名前が思い出せないの」
と言った。
口許が美しい人で、「み」から始まる名前の人だった。

私は友人の名前ばかりか、降りるはずだった駅名も思い出せないまま、乗り換えてはどんどん北に向かっていた。薄着だった。乗り換え駅は小さくアスレチックのような複雑な作りだった。
目的地に着くために戻らなければいけないのだから早く降りるべきなのに。

その列車の中の、家の部屋のような場所で人と話をしていたら、ふと見えた古いアルバムの一部に亡くなった従兄弟の字を見た。開くと他の親族の写真もある書類だった。
話していた老人が、親戚だという。
あまりな偶然に、
「このために列車を間違えたのね」
と泣く私の脇にいる、従兄弟の配偶者も頷いた。

旅立つ前は、その場所由来の漬物の名前を、生まれが違う知らないはずの私が連呼していた。
変な名前だったが、これも忘れてしまった。

 

 

このように夢のことを書いてみたが、もう思い出せない。
陸路も、自分で飛んで空を行くときもなぜか「いい夢」は東北だ。

夢の途中で起きたのは、間違ってケータイを触った母からの電話のベルのためだった。
3時55分。
「大丈夫、起きてたよ」
と嘘をついて電話を切った。

 

 

もう一生彼女の名前は思い出せないのだろうなあと懐かしく感じつつ、短いもうひと寝のために眠ってみます。
おやすみなさい。