山岸凉子 著「アラベスク」を読み返しました

こんにちは。
昨日、思うところがありマンガを読み返しました。
まだ途中までですが、今回はこれまで繰り返し読んだのとは違う視点からストーリーを追いました。
今日はそのマンガ、
「アラベスク」
をご紹介します。
「ネタバレあり」ですのでご容赦ください。

 

 

「アラベスク」は、少女漫画雑誌「りぼん」に連載された、山岸凉子先生によるバレエマンガです。
連載期間は、1971年10月号から1973年4月号までてす。
これを第1部として、新たに第2部が「花とゆめ」創刊号の1974年6月号から1975年22号まで「花とゆめ」にて連載されました。
絵柄は当時の少女マンガとしては異色な、人間に近い長い顔になっています。
山岸凉子先生の初期の作品に出てくる少女は、編集さんや読者の受けがいいようにと顔が丸く目が大きい絵柄でしたが、アラベスク連載の少し前からご自分の絵柄に戻したそうです。

さて舞台は、現在のロシア連邦がソビエト連邦だったころのこと。
ウクライナ共和国のキエフのバレエ学校の6年生、ノンナ・ペトロワ16歳が主人公です。
ノンナは身長168cmと長身で、当時のバレリーナとしては規格外でした。
母が同学校のバレエの先生で、常に優等生の姉イリーナと比べられるノンナは、劣等感にさいなまれ、涙ぐむこともしばしばです。
そんなノンナの才能を、劇場総裁の視察に同行していた「ソビエトの金の星」ユーリ・ミロノフが見出します。
二人に乞われて、遠いレニングラードのバレエ学校へ編入することになったノンナ。
転入生を好奇の目で見る在校生の中で、劣等感を感じながらミロノフ先生にしごかれ、
「キエフに帰る」
と泣いて、すったもんだします。
その後、秘密裏に計画されていた作品の主役という大役抜擢されて驚きます。
その作品が
「アラベスク」
でした。
ノンナの役は、「モルジアナ」です。

アラベスクのバレエ公演は成功を収め、並行して映画化の話が企画されます。
映画は、レニングラードとモスクワのボリショイバレエ団との合同出演です。
レニングラードからはユーリ・ミロノフの出演は決定です。
そしてモルジアナ役には、レニングラード生活の序盤から登場していた謎の少女、実はボリショイバレエ団の天才少女「ライサ・ソフィア(ラーラ)」が有力視されます。

ノンナは持ち前の弱い精神で劣等感に悩み、力を出しきれず、映画撮影中代役としているだけのモスクワから逃げてキエフに帰るのでした。
そして…。

 

 

「アラベスク」は、はるか昔に単行本を買ってから、何度も読み返した私が大好きな作品です。
しかしこれまで、ノンナが移動する場所について意識したことがありませんでした。

ノンナが生まれ育ったのは、当時のソ連邦ウクライナ共和国のキエフです。
そして、編入した学校があるレニングラードは、現在のロシア連邦北西部の、レニングラード州「サンクトペテルブルク」です。
ラーラのボリショイバレエ団があるのはモスクワです。
この3つの都市を繋いでできる三角形は、思っていたよりも大きそう。

グーグルマップで調べてみました。
キエフ→レニングラード(サンクトペテルブルク)がざっくり1000kmです。
サンクトペテルブルク→モスクワが約650km。
最後にモスクワ→キエフが約750キロです。
日本で比較すると、確か千葉県の銚子から鹿児島最南端(島嶼部を除きます)のあたりまでで1100km。
そして同様に北海道も1100kmてす。
そのへんに置き換えて体感してみていただければと思います。

思えば、ノンナがキエフからレニングラードに向かったときの描写はありません。
おそらく、飛行機だったんじゃないでしょうか。
ノンナとミロノフが映画のためにモスクワに向かうときは駅で見送られています。
ノンナがモスクワから逃げてキエフに帰るときは、「キエフ1枚」と切符を買って電車に乗りました。
そして行方不明になったノンナの居場所を知ったミロノフは、急ぎ飛行機でキエフ近隣と思われる土地へ向かいます。
グーグルマップで東京から距離計測ツールで直線を伸ばしてみると、750kmだと山口県あたりですね。
なお距離なので道のりと違い、移動距離としては正確ではありませんのでご容赦ください。

 

 

歴史や地理に全く疎い私は、いつソ連がロシア連邦にどういう経緯で変わったかも知りませんでした。
現在の国際情勢も興味がなく、ぼーっと生きています。
ツイッターのトレンドで
「テレビ東京が放映中の映画を中断してニュースを流している」
という話を見て、それでもボーッとしていました。
数時間後に、
「あれ、これって大変?」
と思いグーグルマップを見て
「あっ、ウクライナの首都はキエフ」
と気づいたのです。
「アラベスク」を読んでいた私には、キエフは古い友人の生まれ故郷であり、彼女の家族が暮らす土地なのです。
現在の情勢によってガソリン価格がどーなるこーなるといった自分への利害関係ではなく、初めて人として身近になり、胸が詰まる思いでニュースを見ています。

ツイッターには、私と同じように
「キエフはノンナの出身地」
と驚きを語っている方々が多くいらっしゃいました。
同じような形で胸を痛めている人がいることへ小さな安堵感を感じるとともに、作品が持つ力に驚いています。
音楽であったり、小説、マンガであったり。
人と人、離れた地域をつなぐもののことを思い、作った方に感謝をした昨日でした。