萩尾望都 著「城」を再読しました

こんにちわ。
今朝の身支度中にふと、昔読んだマンガのヒトコマを思い出したら頭から離れなくなったので、再度買って読んでみました。
今日はそのマンガ、萩尾望都先生の「城」をご紹介します。
以下はかなりネタバレですがこんなものではこの作品を全然説明できていません。
ネタバレが嫌なので以下を読まない方もネタバレてもいい方も、機会があればこのマンガを読んでいただきたいところです(ご興味があればですー)。

 

 

「城」は数えると34ページの短編です。
私は、細かい設定はほとんど忘れていました。
初出は、小学舘の「プチフラワー」1983年9月号です。

幼い頃に両親の離婚で父親についたラドクリフは、

わたしは
おまえのために
名門の
学校を
選んだの
だよ

という父親の命に従い11歳で寄宿学校に入ります。
父親の望むいい子でいたラドクリフですが、
「神経質でわがままで扱いにくいラドクリフを妻が自分におしつけていった」
と父親が人に言う言葉を聞いて心のバランスを崩し、潔癖性などの問題を発症します。
そこで、親切で世話好きの「アダム」がいる上級クラスに入ることになりました。
ラドクリフは優等生で優しいアダムが大好きです。

そこには、アダムと正反対のワルの「オシアン」がいて、いちいち構われるラドクリフはオシアンを好きになれません。

ラドクリフには子供の頃から心に小鬼がいます。
小鬼は石を背負ってこちらを見ながら、

ラドクリフ
手伝って
くれるの
かい

ラドクリフ
手伝って
くれないの
かい

と言い、石を詰んで城を作っています。

 

あるとき小鬼に寄っていくと、小鬼は

ああ
やっと来たね!

と喜び、

さあ
はこんで
石を

お城をつくらなけりゃね

だれでも
つくらなきゃ
だれでも
自分の城をね

といいます。

ラドクリフが拾ったのは黒い「モンク石」と「キライ石」。

パパを憎んでいること、学校が嫌いなことを小鬼に指摘されても、ラドクリフは「いい子」になりたい一心でモンク石もキライ石も拒否します。

あるとき、小鬼はラドクリフに「親切で完璧なアダム」の城を見せてくれます。
アダムの城は外が真っ白ですが、裏は黒い石が積まれず崩れているのです。
そして、ラドクリフが嫌いなオシアンの城は真っ黒ですが、その裏には真っ白で立派な壁が築かれていました。

小鬼は

お城をつくる
石の数は
きまってる
白と黒と
半分ずつ

といいますが、ラドクリフには受け入れることができません。

そんななか、ラドクリフはワルのオシアンと先生の若い奥さんとの密会現場を目撃してしまいます。
ラドクリフがアダムに相談をした結果騒動が起こり、奥さんとオシアンの二人は完全に別れます。

ラドクリフはオシアンから奥さんへの手紙を預り、アダムと一緒に奥さんに渡します。
そのときアダムは、「先生を裏切っている」と、彼女がオシアンからの手紙を受けとることを強く咎めます。

そのとき彼女は「ヒラッ」とその手紙をかざして

恋したこと
ないのね

と軽やかな笑顔で自転車で去っていきます。

この
「恋したことないのね」
のヒトコマが、今朝の私の脳裏に浮かんたヒトコマです。

消えていく彼女の向こうに、ラドクリフには彼女の「みがかれた黒と白の石が積まれた美しい城」が見えるのでした。

オシアンは故郷に帰り、季節が変わります。
ラドクリフは、小鬼が自分の分身であること、自分がいろいろな石を積み重ねなければいけないこと、またそのつらさを受け入れて物語は終わります。

このマンガのたった34ページに詰まっていることは多く、深く、
「何という人なのだ」
と私はあらためて、萩尾望都先生を尊敬するのです。

 

 

若き日の過ちは、あとになれば叫びたくなるような恥ずかしさです。
若いからこそ突っ走り、後に引けず、大きな失敗にもなります。

今のネット社会では特に、デジタルタトゥーとして過ちが後に残り、魔女狩りの対象になり、取り返しがつかない。

でも、正論で済まないのが、恋。

それを軽やかに風のように表現されたこのコマが、今日は頭から離れませんでした。

そして、
若い人の恥ずかしい過ちへどうか赦しを、
と、密かに願う本日でした。

 

 

ずっと好きだと思っていた、この「城」という作品について、そんな角度から見たことはありませんでした。

長く生きていると、同じ作品に対しても感じることが変わるのですね。

うまくまとまりませんが、「城」、とにかく名作です。
機会があったら、ぜひお手にとってみてくださーい。

(追記)
小学舘の「訪問者」というマンガに収録されています。
表題作もいいし、同時収録の「天使の擬態」も私は好きです。